知る権利

4月30日

アンジェロ 春山 勝美 神父
Fr.Angelo Haruyama Katsumi, OFM
haruyama@netvision.net.il

4月27日、安息日の午前10時前、ヘブロン近郊のユダヤ人入植地にテロりスト2人がイスラエル軍兵士を装って侵入し、ベットで寝ていた3人の子供に銃を乱射し、5歳の女の子を殺し、2人の兄弟に怪我、別の家では、二階に上がり、寝室で寝ていた夫婦に同じように銃を乱射して殺害し、子供に怪我を負わせました。そして、銃声を聞き、駆けつけた住民1人を殺し、3人に怪我を負わす惨事がありました。アメリカが必死になって、イスラエルの報復を押さえ込もうとしてるのに、パレステイナの「馬鹿」が、また、暴力の応酬に弾みをかけたようです。イスラエル軍はヘブロンを包囲し、テロリスト狩を展開しています。

この「馬鹿」は入植地のユダヤ人を殺すことで、「ユダヤ人から、まず、占領地を奪回し、その上、彼らをパレステイナから排斥できる(Intifada)」と信じているのです。だから「馬鹿」なんです。もっと「大馬鹿」がいます。このような「馬鹿」を養い、育てている人たちです。その上、「馬鹿」や「大馬鹿」たちのしていることは、抑圧された者として、当然のことと是認する人たちもいます。

イスラエル社会には最初の「おんな・かみかぜ・テロリスト」の素性が知れ渡っています。彼女は既婚者でした。しかし、子供がなく、夫から第二婦人を迎えたいと言われ、実家に戻っていました。彼女は「かみかぜ」として突撃直前、周囲に、私は「地獄」に落ちると漏らしていたそうです。「殉教者」としての天国ではなく、イスラムの教えに「背く者」として、絶望的な「死」でした。二番目も「離婚者」でした(チェックポイントで自爆)。三番目は18歳、、四番目は17歳の少女でした。

4月23日、14歳のクラスメイト3人が手製の爆弾でイスラエル入植地を爆破しようとして侵入し、発見され、射殺される事件がありました。これらの少年少女ばかりでなく、他にも多くの子供たちが難民キャンプの学校で、教えられるまま、「Intifada」運動に参加し、パレステイナ建国のため、死を決してユダヤ人と戦い、殺されて殉教者になりたいと憧れています。私には、B29の爆撃ばかりでなく、艦載機も飛来するようになり、逃げ惑う私たちは機銃掃射され、しかも、原子爆弾まで投下されても、「竹槍」で米軍を迎え撃つ「戦意高揚」のあのときが思い出されるのです。

難民キャンプの学校は国連(UNRWA)が経営しいます。学校の建設ばかりでなく、教師には国連の職員として給料が支給されているからです。この難民キャンプからテロリストが輩出し、「かみかぜ」が発進するので、イスラエルは国連がテロリストを養成していると見ています。

さて、日本ではパレステイナ難民キャンプで奉仕活動したNGOのメンバーの報告や、日本のメデイアを通して、イスラエル非難が強いようです。「ジェニン虐殺」のニュースは「事実の報告」として受け止められています。国連特使ラルゼン(TejieLarsen)の「虐殺」の一言は、一瞬の内に、全世界の常識となりました。このほか、ベトレヘム問題では「イスラエル軍、ミサ中の司祭殺害」、「イスラエル軍、生誕教会突入」、「フランシスカン、銃撃に抗議」などなど。悪魔的加害者イスラエルを印象付けるニュースを流しています。

しかし、イスラエル在住の者の間では、メデイアは公平に欠くと言うよりは、パレステイナ一辺倒だとの意見です。一つの例です。4月下旬、EUのプローデイ(Prodi)委員長が日本を訪れ、国会で演説しました。NHKはこれをニュースとして全世界に放送しました。27日のインターネット版読売新聞に、民主党の鳩山代表が中東平和広島会談を提案したところ、「一方に偏った解決策はよくない」との発言がありました。前日の26日、イスラエル新聞Ha’aretzはロイター通信から、Prodi委員長が日本で、「アラファトの間違いはアメリカ前大統領クリントンの提案を拒否したことだ。今回の混乱はアラファトのキャンプデイヴィット調停拒否が原因」と発言したと伝えました。

しかし、NHKも朝日、読売、毎日の新聞もこの発言を伝えていません。鳩山代表はProdi委員長の「あの」言葉が理解できたのでしょうか。日本では反アラファト、反パレステイナ発言は全く封じられています。イスラエル社会では、日本のメデイアのこの傾向が指弾されています。個人情報保護法案問題でメデイアが「報道の自由」「国民の知る権利」を挙げて反対していますが、パレステイナ問題では日本のメデイアは「国民の知る権利」に応えているとは思えません。

また、イスラエルはジェニン虐殺事実調査団受け入れ問題で国連と交渉中です。イスラエルが問題としているのは「出来事の列挙」ばかりではなく、「どうしてこうなったのか」も調査の原則として重大だと主張しています。朝日新聞はこれは単なる調査引き伸ばしで、「ごね」と決め付けました。(4月28日インターネット総合)。しかし、私には、「どうしてこうなったのか」、これは事実解明調査の絶対必要用件(sine-qua-non)と思いますがね。

ところで、ベトレヘム問題をイスラエル側から見るとこうなるのです。パレステイナガンマンはキリスト信者の住むベッジャラの住宅を占拠し、そこから、向かいのイスラエル入植地ギロを銃撃します。ガンマンは、事前に、住居者の了解をとったのか、勝手に入り込んでのことか、分かりません。イスラエル軍は反撃し、その建物を破壊します。破壊の様がテレビの映像で映し出され、語りつがれるのです。イスラエルがベトレヘムをパレステイナに返還するとき、ベトレヘムを迂回するバイパスを作りました。このバイパスを通るイスラエル車両を待ち伏せし、狙撃します。ベトレヘム近郊の難民キャンプから少女たちの「二本足ミサイル」がエルサレムを攻撃しました。これらの行為を占領地を奪回するため、当然の権利と主張しています。そして、イスラエル軍はイスラエル住民をテロリスムから守るため、テロリスト逮捕、応じなければ殺害、そして、テロ基盤の壊滅を目的としてベトレヘムへ進攻しました。

追い詰められたガンマンたちは生誕大聖堂と付属の修道院に逃げ込みました。教会に保護を求めたのなら、武器を院長たちに渡し、身柄の取り扱いを院長たちに任せるべきです。彼らは武器を持ったまま、交戦するつもりで立ち篭もったのです。修道士たちを人質に聖所を占拠したのです。これは、ヴァテイカンとパレステイナとの協定違反です。教会側はイスラエル軍の突入で聖職者たちの生命と聖所が破壊されるの避けるため、パレステイナ人を保護しているとの立場をとっています。聖所を管理するギリシャ教会、フランシスコ会、アルメニア教会はイスラエル軍に共同提案しました。イスラエルとパレステイナとの交渉で、イスラエル側の主張が教会案に沿うものです。すなわち、ガンマンは投降し、イスラエルで裁判を受けるか、国外追放のどちらかを選ぶことです。パレステイナ側の主張はガザへの安全な移動です。

戦車、ヘリコプターの援護を受け、重装備のイスラエル兵が銃撃するので、「判官びいき」がはたらいて、「パレステイナ人かわいそう」となりますが、私には、自ら望んでこの悲惨な災難を呼び込んでいると思えるのです。今回のIntifadaの作戦を立て、実行させている指導者が「Intifada」ではなく、イスラエル人との共存がアラブ人の自由と独立の原点であることに気づいて欲しいのです。憎しみを乗り越える作戦こそが、まず、必要なのです。

イスラエル軍はベトレヘム旧市街(生誕教会近く)は「戦闘地区」と宣言し、外出禁止令が出ています。28日、食料調達のため数時間解除されたとのニュースがありました。その日、ベトレヘムで働くシスターをエルサレムのキリスト復活大聖堂で見かけたので、尋ねたところ、主要道路は封鎖されています。しかし、わき道があるので、このようにエルサレムにも来ることが出来ます。不便だけど、何とかやっていけますとたくましい言葉が返ってきました。

生誕大聖堂付属の各修道院での生活環境は悪化しています。電気、水道は止められています。蓄えていた食糧は食べ尽くしたようです。フランシスコ会がイスラエル最高裁に食糧補給の訴えを起こしました。判決は訴えの却下でした。イスラエル軍の作戦は兵糧攻めなので、テロリストに精力をつけさせるようなことは許せない。それに、聖職者たちは出ることが出来るのに、自ら望んで留まっている。人道には反しないと言うのものでした。
29日までに54人と5人の遺体が教会を離れたとのニュースがありました。