ガリレア湖の満月

月3日

アンジェロ 春山 勝美 神父
Fr.Angelo Haruyama Katsumi, OFM
haruyama@netvision.net.il

 ガリレア湖の月  星空に魅せられ、ガリレアへ行きました。在イスラエル日本大使館は、状況が状況なので、路線バスの利用を避けるように勧告しています。しかし、二本足しか、移動の手段を持たない者にとって、長距離を、しかも、短時間で移動するにはバスの利用は避けられません。でも、休暇明けの兵士たちが部隊に戻る日曜日の早朝バスは自爆テロリストのターゲットになりやすいので避けました。昼ごろ、バスセンターに着いた時、テイベリア行きのバスは出た後でした。それで、45分待つ羽目となりました。

  さて、バスがホームに入るのが見えたので、待合室を出、ホームに行って見ると、そこには高校生と思われる若者でごったがえっていました。エルサレムでのエヴェントに参加Moon-Mし、行事が済んで帰宅するのだと思いました。バスに乗り込んだのですが、空いた座席が見当たらなかったので降り、30分後の次のバスにしました。

   テイベリアの修道院屋上で星空を眺めていたら、院長様が、「ここは条件が悪いでしょう。南側は大きなホテルだし、都会の照明も邪魔になるでしょう。タブガのほうが良いと思いますが・・・」とアドバイスしてくれました。

   タブガの責任者は、聖墳墓修道院で奉仕を共にした仲です。電話したら、迎えに行くとの暖かい返事がありました。タブガの夜は満月でした。
(写真:ガリレア湖の月;Moon-M)。タブガには、キリストが「パンを増やした」聖所(マルコ6.30-44)と「ペトロに首位権を与えた」聖所(ヨハネ21章)があります。フランシスカンが管理する聖所は「ペトロの出現の場首位権」です。

   エルサレムでの出来事、主の十字架の死と復活を体験した弟子たちはガリレアに戻っていました。その日、ペトロが漁に出ると言うと、ほかの弟子たちも従いました。その夜は何も獲れませんでした。明け方、岸辺に立つ人が、「やあ、みんな、何か魚はないのか。」と声をかけました。弟子たちが、「ありません。」と答えると、その人は、「舟の右側に網を打ちなさい。そうすれば獲れる。」と言いました。そこで、網を打つと、魚がいっぱいかかって網を引き上げることが出来ないほどでした。イエスが声をかけたところです。
(写真:出現の場)。弟子たちが岸に上がって見ると、炭火が熾してありました。イエスは獲れた魚を持ってきなさいと命じ、共に食事をしました。そこが、聖堂内の祭壇の位置です。(写真:Mensa)Mensa

   この時から、湖の水位は約10メートル引いてしまったのではないでしょうか。のどかに、魚釣りをしている人がいますが、ガリレア湖は漁業権が設定されています。入漁権を持たずに、魚を獲ると罰せられます。しかし、サギは天地が造られた時、神から与えられた権利をたてに、「入漁権」を持たず、魚を獲っています。
(写真:釣り人:サギ)

   タブガの地名はギリシャ語heptapegon(七つの泉)がなまったものと言われます。釣り人遠藤周作の「深い川」に登場する、ガリレア湖畔のイエズス会修道院は私たちの聖所の隣ですが、そこには、二つの泉があり、私たちのところにも、一つあります。このことは知っていました。ところが、最近派遣されてきたブラザーが、近くにちょっとした滝がると教えてくれました。それで、連れってもらいました。ナザレから来たと言う、アラブの一家族が水遊びをしていました。女たちも、着衣のまま、滝に打たれていました。「写真を撮りたい。」といったら、ポーズをとってくれました。帰り際、フレンチポテトを揚げていた主婦が「食べてください。」声をかけてくれました。直前まで、見知らぬ人であっても温かく迎え入れてくれるアラブのホスピタリテイは、今も、このようにいきいきとしています。
(写真:アラブサギの大家族)

   水は私たちの所有する土地から流れ出ています。これはたいした観光資源だ、放置しておくとはもったいないと、開発プランを練り、責任者にプランを持って行きました。そしたら、「あの水は私たちのものではない。」と、にべもない返事でした。「だって、土地は私たちのものなんだろう。」と言えば、「至福の山にバルブがあり、イスラエル政府が管理している。それに、あそこは滝ではなく、水道管からの放水だ。」と告げられました。

アラブの大家族   ところで、タブガに行く前、テイベリアの温泉プールでのんびりしていた時のことです。屋外のプールサイドの日陰にイスラエル人家族がいました。一歳を越えたばかりと思われる男の子が日向に出て来、しゃがみこみ、なにやら見つめていました。蟻の動きに見入っていたのだと思います。

 お父さんは、子供に向かって声を張り上げました。2度、3度。子供は応えませんでした。お父さんは席を立ち、無言で、子供の両肩を持ち、日陰に移しました。子供は大声で泣き出しました。しかし、次第に、泣きじゃくるようになり、まもなく、お父さんの方に歩み寄りました。お父さんは声を和らげ、子供にわかるように話し出しました。子供はうなずいていました。昼下がりの、日向は体によくないことを解らせたのだと思います。そして、アイスボックスからキャンデイーを出し、子供に与え、自分のためにも取りだして、二人で食べだしました。     (写真:Luna-M)