フィリピン・フランシスカン・デフセンター訪問
8月27日から9月3日まで、海外宣教委員会はフィリピンで聾者のための奉仕をしている兄弟佐藤宝倉と奨学金プロジェクトの支援先であるフランシスカン・デフセンターを訪問しました。 フランシスカン・デフセンターはマニラに近いケソン・シテイの事務局と教育者の育成のためのセンターとサマール島カルバイヨグ市にあるフランシスカン・デフセンター(聾者の教育センター、以下デフセンター)の2か所がありますが今回はカルバイヨグのセンターを訪問取材しました。
センターを訪問した海外宣教委員と生徒たち
カルバイヨグのセンターは、正式な寮としての基準を満たした学生寮(女子学生)と教室のある施設です。男子学生は、センターの至近距離にある下宿から、食事の時間にセンターで朝食事をしてから通学し、放課後センターで夕食を済ませて下宿に戻ります。 さて、毎年訪問するたびに支援先のデフセンターは、設備やプログラムが整備されている印象を受けます。これは、センターのスタッフの努力と多くの人の支援の賜物といえます。また、設備やプログラムの充実はセンターに寄宿し学ぶ子供たちや、生徒や奨学金を受給しカルバイヨグ市内のクライストキング・カレッジ(以下CKC)の付属小学校、高校に通う生徒の学習の効率化や学力向上につながっています。この5年ほどの間、単位を落とす生徒はゼロです。以前、補習をするにも教室やパソコンが不足していましたが、プロジェクターなどの機材も充実した今は、手話の反復練習や授業の予習復習に十分な施設のが整備され、今年度、全員進級・進学をはたしています。 さて、こうして無事に高校や大学を卒業しても長年の課題である卒業生の雇用は、フィリピン社会が高い失業率のため、ハンデキャッツプを持つ人の雇用が少ないフィリピンでは就ける職業が聾学校教員、マッサージ師、ファーストフード店バックスタッフなど今も選択肢が少ない状態です。生徒達の未来を切り開いてゆくのも継した課題です。
佐藤神父とセンターの生徒たち
さて、訪問中、奨学生と保護者の交流会が行われました。生徒と保護者が大勢集まりました。保護者代表からは、「子供達は、経済的に苦しい家の子供が多く、日本からの奨学金受給に感謝しています。 今後も経済事情の苦しい生徒のためにプロジェクトの継続お願いします」と感謝と継続のお願いがありました。
フィリピンは日本のように通学のための交通手段が地方では豊富でないため山間部の子供たちは市街地の学校に通学できません。また、そうした集落は第一次産業(農業・漁業)に従事する人々が多く、その収入で私学に通わせるのが困難なため、奨学金を受けて寮から通学するのが現状では最良の方法なので、保護者代表の言葉はその現状を物語っています。
奨学生と保護者の集いの集合写真
センターが目指す方向性は、将来的な聾者の自立ですが、こうしたプランが形になるのには時間が必要です。 現在、支援を受け、高校、大学を卒業した中にも職業訓練所や教員養成コースの就学中で、資格や技能を身につけて 社会に出て働き始めて初めて成果が現れますが、それだけが目的ではありません。
佐藤神父によると、「聴覚障害者の自立と手話を通じた奉仕者や教員の養成」も目標にあげています。それは、単に自立できればよいのではなく、同じような対場の人を助けることのできる人材を育成していくということです。そのために寮では奉仕の精神を養うような企画や宗教教育、黙想会なども実施しています。センターは、口コミもあり、毎年新しい生徒がやってきますし、地元の公立の聾学校の小学校を卒業した生徒も高校のクラスがないためCKCの付属高校を受験します。それは単に、聾者のための
高校以上のクラスがCKCだけにあるからではなく、教育内容が充実してきていること、や宗教教育、奉仕の精神などをはぐくむ環境があるからでもあります。
また、学ぶ生徒たちも将来的に聾者を雇用する企業に就職するというものから、資格を取ってより条件の良い仕事に就くために学ぶケースが増えているのと、実際にセンター出身者の教員が公立の聾学校の教員になってミンダナオ島のダバオなどで働き始めており、少しではありますが目標の一つである聾者の自立が形になってきています。
教室訪問の時は歓迎のパネルで迎えてくれた
最後に、センターで学ぶ生徒たちの努力やスタッフの尽力には訪問するたび頭が下がりますが、今後もこうした支援ができるよう紙面でも協力を呼び掛けていきたいと思います。 海外宣教委員会